不思議な不思議なグリグリメガネかけて本を捨て街へ出て

 なんやかんやございましてソフトコンタクトレンズを購入するにいたった訳でございまして。ワンデー。乱視が入っているのでその分高いああいくら本が大好きだからと言って暗い所で読まなきゃよかった。小学生の私!お前が読んでる推理小説は今後の人生に役立たないよ!読むなら専門書とか参考書とか利口になれるもんを読め!傷つかないよう先に言っとくけどお前高校中退すんぞ。
 で、どうやらコンタクトレンズを買うには眼科にかかる必要があるそうで屈辱の視力検査を終え(眼鏡かけてんのに右0.3.裸眼で両目0.04)、こんにちはと診察室のカーテンをめくるとあらやだ。超臭い。ヘイ、ミス女医。ユーは分からないかもしれないけれどめっちゃパヒュームのスメルがキツイです。何それ。診察するにあたって不要でしょ香水は。少しならいいよ?ほんのり香るくらいならむしろ好きだよ。ああ、女の子の匂いだなって。でもユーのはやりすぎ。ミーが診察中ずっと口で呼吸しているのにユーは気づいてた?ネクストの機会があったらマジで頼むからパヒュームは仕事終わってからにプリーズ。思う存分頭っから降り注げ。
 特に目の異常はなかったのでとうとう己の眼に異物を装着する方法を伝授してもらう儀式へ。最初にキレイキレイで手を洗い、どのコンタクトレンズにするかとか、装着法を教えてくれる誠実な男性(以下男性と表記)の指示に従ってる最中、致命的な事に気付きました。先日パン切り包丁で左手の親指をスライスしてしまい絆創膏でぐるぐるにまかれているのです。男性は困った顔をしている。左手の親指はどうやら重要な役割があるらしい。どうしよう、無理だ。所詮私みたいな下賤な民がソフトコンタクトレンズなんて高級なものを手に入れるなんて夢物語。ここで、なんかもう男性が鏡に向かう私の前にパッケージされているソフトコンタクトレンズを準備しているけれど帰ろう。一言「ありがとうございました」だけ言って帰ろう。などと考えていましたが、男性のポジティブシンキングな言葉「難しいかもしれませんがなんとか右手の人差指にレンズを乗っけてもらいます?」で世界が一転。いいの?左手の親指を使わなくても大丈夫なの?別にそんなに気を使わなくても平気?自由?ていうか面倒くさいから投げた?元々不器用な女の子(三十路☆)ですので滑るレンズと互角の戦いの末、見事に装着に成功。次の戦い、レンズを外す。
 昔ハードの方を使っていたものの手で外すことができなくて吸盤みたいな用具でキュッポンしていました。もちろんソフトにもそういうキュッポンはありますよね?と男性に問いかけると笑顔で首を横に振りました。「眼球は触っても大丈夫です」。うんとね、おねえちゃんが言いたいのは眼球に触ったら痛い?じゃなくてキュッポンが欲しいのね?不器用だから確実に一回で楽に取れる方がいいの。ないの?無理?
 家に帰りレンズをしばらく目に馴染ませた後、男性がアドバイスを思い出しながら自力外し。わあ!本当だ!レンズがあるから眼球を触っても痛くない!だけど取れない!男性!男性をここへ!ガリガリ君あげるから男性来て!
 取った後の目の痒みをきっと私は永遠に覚えている。色褪せることのない心のアルバムにそっと挿む干からびたワンデーアクエアトーリック…。