たとえば 誰かが君を惑わせ 迷宮に迷い込んでも

 明けましておめでとうございます。本年もご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。私事ではありますが、地獄の本厄が終わり今年はむしろ良い事しか起こらない!婚約!結婚!妊娠!出産!毎日テンション↑↑で過ごしたいなと思っております。来週くらいで婚約して二月に結婚すれば今年の終わりには子ども産めるんじゃない?

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A「はいどーも」
B「温かい拍手ありがとうございますー」
A「こいつら誰や?みたいな顔されてる方が多いんですけども」
B「ボクら『ダブルふくし』といいますー」
AB「「よろしくお願いしまーす」」
A「今日はね、ぜひ、顔と名前だけでも覚えて帰」
B「いやー、ボク本当は警察官になりたかったんですよー」
A「キミ急に何言い出したん。ボクまだ喋ってる途中やで」
B「中学校の卒業文集にも書かれてん。『将来警察官にお世話になるであろうランキング』第一位!」
A「キミ気付いてなかったら言うけどそれイジメやで」
B「だからちょっとキミ交番にいる警官の役やってもらってもいい?」
A「分かった。なんとか頑張ってみるわ」


A「ああー今日もいい天気やなー」
B「あのー、ちょっと教えて欲しいんですけれどもー」
A「はい、おじいちゃんどうされましたー?」
B「ちょっと道が分からなくなってしまいましてー」
A「あー、この辺は入り組んでますからねー。どこ行かれるんですか?」
B「あのー、あの世なんですけどもー」
A「いやいや、そんなんあかんがな」
B「……人生という迷路に迷い込んで七十余年。出口が見当たらずいっその事どこかでリセットできるんちゃうかなと思たんですわー」
A「できんできん、それでもみんな必死に生きてるんやで。おじいちゃん、あとそれあんまり人前で言ったらあかんで」
B「お巡りさんなら知ってるかと思たんですけれどもー」
A「お巡りさんに対して絶対的な信頼を託してるんは理解できたけど過大評価。そない期待されても困るわ」
B「……最後の…命綱やったんですけれども……」
A「おじいちゃん!そろそろボク怖なってきたんで家族に来てもらおか?おうちどこですか?」
B「それがおうちどころか自分が何者なのかすら、とんと思い出せないんですー」
A「…ああー」
B「どないしましょ?」
A「こっちが聞きたいわ。あ!そのカバンの中に名前とか住所とか分かるのあるんやないの?」
B「…ええと、これとか…」
A「手帳やないの。それは絶対なんか書いてあるやろ…ってこれ障害者手帳やん!」
B「はいー」
A「はいー、やないで!おじいちゃん等級えらいことなってるで!」
B「あ、こっからこっち動かないんですわー」
A「なにそのナチュラルな返し!あと…これは…要介護認定5…?」
B「はいー」
A「いやいや、おじいちゃん、要介護認定は市町村に要介護認定申請を行い、その後市町村から調査員が派遣され認定調査が行われるもので、要介護て言うんは平たく言うと『寝たきりや痴呆等で常時介護を必要とする状態』で要介護認定5はその中でも抜きんでてトップ中のトップ『動作能力が低下しており、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態』なんやけど大丈夫なん?自分ここまでどうやって来たん?!」
B「えっと、歩きでー」
A「徒歩で?!」
B「万歩計によると今日は8キロくらい歩いてるみたいですー」
A「あかん!ほんまあかん!おじいちゃんこれ役所行って届けせな!自分めっちゃ歩けますアピールしてきいや!世の中には本当に辛い思いをして『老々介護』なんて最近よう言われだして夫婦がお互い高齢だけれど他に面倒見てくれる人もおらんから支えあってるなんてケースも多いんやで。そんで保険が下りないだの年金支給年齢を引き上げるだの間違ってるでこの国は」
B「…ものすごく熱く語られてもタナカは困るんですけれどもー」
A「ごめんな、タナカさん…。って!おじいちゃん!今自分の名前思い出しましたやん!」
B「あー、ほんまですわー!わたくし、はっきり思い出しました。タナカ タロウいうもんですー!」
A「あー良かったですわー。じゃあタナカさんね、家族の人にね、むかえにきてもらいましょうねえ」
B「あのー、もう一つ思い出したんですけれどもー」
A「なんです?」
B「あのー、タナカは結婚したことないんですー」
A「家族おらんのかい!」

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 オチはないのですが、脳みそが独自に動いて漫才を始めてしまってそれがちょっと面白かったので書きました。私は標準語しか話せないのに脳内の漫才師さんはエセ関西弁を喋ってました。脳みそってまだまだ未知なる可能性を秘めていますね。