ココは行っとけ 今だカッ飛べ アクセル ベタ踏みで行け

 よく巷で『天使みたいな寝顔ね』風な事言うじゃないですか。主に低年齢のお子さまに使われると思うんですけど。こう、パパとママが顔を寄せ合ってベビーベッドで寝てる我が子を見つめながら「目はあなたにそっくり」とか「口元は君に似たね」なんて微笑ましい光景よくありますよね?自分の経験がないから何とも言えないのですがありますよね?ここで肯定しないと次に話が進まないんでとりあえず合点がいかなくても頷いてください。
 でも、ですよ。子どもも人間だし、30をとうに過ぎた私こと社会の屑もしくは塵も人間なんですよ。大きな、ここは大きな括りでね?ですよね?私、人間ですよね?
 そんならきっと恐らく多分、己の寝顔も天使のようじゃないのかなあって。試験前でテンパってる上に現実逃避がしたくてベッドに転がり携帯をいじってたら無性に確認をしてみたくなったんですよ。検証:30をとうに過ぎてる行き遅れの社会の屑もしくは塵の寝顔は天使か否か。
 一年半も使ってるのに携帯の仕組みを理解していなくて散々いじって自分撮りの機能はないことに気付くまで約10分。じゃあレンズはここだし普通に撮る時みたく一枚パシャリ。ちょっとドキドキしてる自分。だって自分の寝顔なんて見れないもの。いかがなものかな?とおそろおそる確認。リアルに声が出たね。「…っうわ」。ドン引き。自分で思いついて自分で実行したことなのに後悔の嵐ね。ほら、目を開けてるときに不細工なのはもうしょうがないじゃん。でもさ、一縷の望みに賭けちゃってたみたいでさ、私が。ひょっとしたら万が一寝顔が天使だったら結婚できるんじゃないかなって。ひょっとしたらね?ひとつ輝けるところがあったら他はもういらないじゃん。その輝けるところがないって分かった時点での絶望感。あ、死のうかな。もうこれ死ぬしかないんじゃないかなって軽く頭をよぎったけどここで諦めなかった私えらい。角度を変えて何回か撮り直し全部不細工だったのを確認して画像を消去。なんか、画像の消去と一緒に私の記憶も消えないかなって期待してたけど消えなかった。まだある。ここに。
 あー地球爆発しねえかなあ。