昔アラブの偉いお坊さんが 恋を忘れた あわれな男に

 コーヒーが飲めなくても生きていけるこの世界が素晴らしい、と唐突に思った。これがお酒だったらそうはいかない。ある程度、付き合い程度にも飲めないと仕事にも差しさわりが出る日本。「じゃあ、一仕事終えたんでどうですか?一杯やりませんか」との誘いに「あ、スイマセン自分酒飲めないんで」なんて返すとその場の空気が凍る。いや、凍るまで行かなくても多少「なんだこいつ社交性の欠片もないのか」とは思われると思う。多分。大体、強制的にコーヒーを飲めという展開にならない。「俺の酒が飲めないのか」となじられる事はあっても「俺のコーヒーが飲めないのか」と迫られた事は27年間生きてきて一度も無い。そしてきっとこれからも。
 いやでももしかしたら私にそういう経験がないだけで真っ当に生きてきた人たち(ここでは大雑把に大学卒業後就職活動をしたことがある人たちの意で)にはそういった修羅場があったのかもしれない。「このコーヒーを飲めない人間は当社に必要ありません」と突っぱねられた人がいるかもしれない。それは辛い。泣いて「御社で働きたい意欲は誰よりもあると自負しておりますがこればかりは飲めません・・・!」と訴えても駄目だろう。だって飲めないんだもん。あーでもここで機転を利かせて「牛乳を!カフェオレでしたら飲めます!」なんて言えば意外と部長の心を掴めるかもしれない。やっぱり印象が大事だよね。インパクトがなくちゃあね。
 なんてことをバイト中に考えていました。ひたすらメモ用紙を作る作業をしながら。(A4の紙を半分の半分の半分までカッターで切る仕事)寒い日が続くけれど確実に春が近づいているようです。